【IPO難民にならないために】中小企業会計から制度会計に移行する前に考えておきたいことをまとめました。

はじめに

会社規模が大きくなってきた組織では、IPO準備のために監査法人の監査を受ける機会が出てくるかと思います。そこで必要になるのが、中小企業で用いられる会計制度(以下中小企業会計とする)から企業会計への移行です。

特にIPOを検討している企業は、中小企業会計から制度会計への移行が必須であり、経理の自計化や早期化と並行して対応が求められます。

しかし、中小企業会計から企業会計へ移行する工数があまりにも多いのみならず、日常のオペレーションすらスムーズにこなせない等が要因で、監査法人から門前払いされるケース = 「IPO難民問題」も最近よく耳にします。

では、そうならないためにどうすれば良いのか、結論からお伝えすると「日々のオペレーションを整えておくこと」に尽きます。

そこで今回は、過去にIPO支援等を行ってきた立場から、中小企業が行う会計と制度会計の違いや、移行する際に大切なことをまとめました。

  • 中小企業会計と制度会計の相違点
  • 移行の際に考えるべきこと
  • 日常オペレーションの構築体制

気になる方はぜひ読んでみてください。

中小企業会計とは

ざっくり中小企業会計とは何かをお伝えすると、「経理人員が不足しているなど、経理体制が十分でない中小企業の実態に合わせて作成された会計ルール」を指します。

これらのルールには、「中小企業の会計に関する指針」「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領」が存在しますが、殆どの場合は中小会計要領をベースに行うと考えられます。

※「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)の概要より引用

中小企業は経理人材の不足や、会計情報を開示する利害関係者(ex, 取引先・金融機関・税務当局・株主・税理士)が限られていることから、それに合わせて会計処理が簡便化されてるケースが多いです。

具体的には、法人税法で求められる処理を意識した会計処理を行うことで、税務申告書による調整を行わないことを意識した処理が中心になります。

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準

上場企業や会社法監査を受ける企業は、投資家等の利害関係者に対する情報提供のために、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に準拠して財務諸表を作成する必要があります。

例えば「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」では、以下のようなルールに対応する必要が生じます。

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準で求められるルールの一例

  • 固定資産の減損
  • 資産除去債務
  • 税効果会計
  • 退職給付会計
  • 連結財務諸表の作成
  • セグメント注記

これらのルールは非常に広範かつ複雑なものであるため、一般的に中小企業において利用されることは殆どありません。

どんな時に中小企業会計から一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にシフトする?

「中小企業会計」と「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」の相違点は述べましたが、どんな時に「中小企業会計」から「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」にシフトしなければ行けないのでしょうか?

例えば、以下のような場合が考えられます。

  1. IPOのために監査法人から監査を受ける時
  2. (事業年度末における資本金が5億円以上 or 負債200億円以上)に該当した

このようなケースにおいては、会計基準を厳密に適用しないといけないのですが、どのような点が異なるのでしょうか?

中小企業会計と一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の相違点

中小企業会計と一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の相違点の一例をまとめてみました。

この表に記載されてる項目はあくまで一部でありますが、この表を見るだけでも、経理体制を整える大変さや、専門知識が必須になる理由が少しはお分かりいただけたかと思います。

どのように対応をすれば良いのか?

上記の相違点を見つけてきたと思いますが、これらにはどうやって対応すればよいのでしょうか?

大枠としては下記の2点です。

  1. 日常的なオペレーションを整える。 ⇨特にオペレーションの変化が求められるものは早急に対応するのがベストです。
  2. 制度会計特有の対応を行う。

⇨かなり専門知識が必要なポイントなので専門家と連携することを推奨します。

なぜ制度会計特有のルールだけではなく、日常的なオペレーションなのか?と疑問が生じるかと思います。理由としては、①制度会計のルールを作る大前提として日常的なオペレーションが整備されていることが必要なこと②日常的なオペレーションは整備に時間がかかるためです。

日常的なオペレーションとは何か?

制度会計への移行をスムーズに行うための大前提として、「日常的なオペレーション」を整えることはとても重要です。日常的なオペレーションの一例は以下のとおりです。

  • 請求タイミングの明確化
  • 債権債務の消込の適切性
  • 受取請求書を網羅的に集めて発生主義で計上できているか
  • 経費精算のプロセスを実施して、上長が適切に承認しているか
  • 現金実査を行っているか
  • 在庫がある場合、定期的に棚卸を実施しているか。在庫の入出庫を継続的に記録しているか
  • 勤怠データをつけているか
  • 給与計算は妥当か。未払残業代といったものは存在しないか
  • 借入金の残高は適切に把握しているか
  • 源泉税や住民税の支払は妥当か

こうした当たり前のオペレーションを高い精度で実施できていないと、制度会計の移行に対応するだけのリソースの確保等が出来なくなるのみならず、制度会計への移行を求められた際に苦労する可能性があるので、可能な限り早い段階から整えることが重要です。

オペレーションの変化が必要な情報は早急に

また収益認識基準や棚卸資産の評価・経過勘定の処理といった、日常的なオペレーションに密接に関わる部分については、専門知識のみのの対応ではなくオペレーションの変化まで求められることから、早急に対応が必要になります。

例えば、棚卸資産の評価に最終仕入原価法を用いていたのであれば、棚卸において数量を計算れば足りたかと思います。しかし、制度会計の適用により最終仕入原価法を適用できなくなった場合は、数えた品目ごとに単価を計算すること・入出庫の都度継続的に棚卸資産の受け入れや払い出しを帳簿に記録していくことが必要になってきます。

その場合のオペレーションの変更は、現場にとって非常に負担になるかと思います。そのため、早い段階からアクションをして効率的な仕組みづくりが求められます。

制度会計特有の対応を行う

減損や税効果会計・資産除去債務といった制度会計特有の論点については、それらに対して対応を行うことの出来るナレッジを持った人間の力を借りながら対応をすることが期待出来ます。

これらは会計上の理論に基づくものであるため、基準に対する知識さえあれば相応程度対応することが可能です。これらの知識を全て網羅的に身につけることは相応程度のリソースが必要になるため、こちらは思い切って専門家に外注してしまうのも一つの手段と考えられます。

まとめ:会計のオペレーション構築と専門家の知見に迷ったら

以上、過去にIPO支援等を行ってきた立場から、中小企業が行う会計と制度会計の違いや、移行する際に大切なことを解説させていただきました。

IPOを検討している企業は、中小企業会計から企業会計への移行が必須にも関わらず、「そもそも何をしたら良いか分からない……」というお声も多く耳にします。そのような方々に対して、この記事で少しでも楽に感じてくれたら嬉しいです。

しかし、経理体制のオペレーション構築や会計の専門知識は誰に相談したら良いのか分からないですよね、、当事務所では会計・税務処理だけに止まらず、システム監査技術者の資格を有している専門家がいることから、業務プロセス改善・システム導入・IPO支援に強みを持っています。

長期的に会社を存続させるには盤石な会計・ファイナンス体制は不可欠です。会計体制が強い会社を早めに構築したいと願う会社様はぜひお問合せください。

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