【保存版】法人設立した後にやるべきこと一覧を公認会計士がまとめました。

はじめに

この記事を読んでいる方の大半は法人設立を検討しているか、法人設立が終わった方かと思います。色々な記事でもご紹介されております通り、法人設立する際は多くの手続きがあります。

そして会社設立後にも、必要な手続きはまだ残っています。また、手続きすべてを自分で調べ、どれを選択するか決めるとなると、大変な労力がかかります。

そこで今回は、公認会計士&税理士である著者の経験を生かし、会社設立後に行うべき手続きを効率良く行う方法について解説します。

設立後に必要な10つの契約

著者の経験から必要な契約は下記の10種類です。

  1. 履歴事項全部証明書と印鑑証明の取得
  2. 会計ソフトの導入
  3. 税務署への設立届
  4. 都道府県税事務所等に対する届出
  5. 社会保険料の設立届
  6. 労働基準監督署への届出
  7. 銀行口座の作成
  8. 法人クレカの作成
  9. 電話番号・ドメインの取得
  10. オフィスの契約

これだけでも面倒な気がしますが、経験からお伝えさせていただくと「経営的にも後回しにしない方が絶対に楽」です。

ではぞれぞれ解説させていただます。

1. 履歴事項全部証明書と印鑑証明の取得

履歴事項全部証明書は、いわゆる登記簿謄本のことで、登記された会社の情報を確認する書類の1つです。他の機関に届出をする際に、添付書類として必要です。

印鑑証明では、個人の実印とは別に、会社の実印を用意する必要があり、印鑑カードを利用して印鑑証明書を発行します。印鑑カードは管轄の法務局に申請すると無料で作成できます。

どちらの証明書も、発行する際に手数料がかかります。こちらの2つの書類は後に使用する機会があるため、各5部ずつくらい取っておくことをおすすめします。
参考:登記手数料について(法務省)

2. 会計ソフトの導入

後述する税務署に届け出る書類を作成できる会社設立ソフトがセットになっているケースが多いため、設立を考える段階で会計ソフトをどれにするか考えるのもオススメです。

どの会計ソフトを導入するかは、お好みで検討して問題ないですが、筆者としてはクラウド会計ソフトをオススメします。口座連携と税理士への連携がしやすく便利であるためです。

またクラウド会計ソフトをご検討する際は、下記の3点を抑えておくと良いでしょう。

  1. 顧問税理士も把握しているか
  2. 何と連携したいのか(例えば、楽天銀行はfreeeと連携できないため、注意が必要です。)
  3. 自分が使いやすいか
  4. 将来どういう方向で成長したいか
    参考:freee会計と楽天銀行のAPI連携契約満了に伴う 口座明細の自動取り込み停止のお知らせ

3. 税務署への設立届

税務署に提出する書類は以下の通りです。

  • 法人設立届出書
    代表者の情報や事業目的など、会社の概要を税務署に届け出る書類です。設立後2ヶ月以内が提出期限です。
    参考:内国普通法人等の設立の届出(国税庁)
  • 青色申告の承認申請書
    青色申告で法人税を納めるためには、事前に書類の提出が必要です。提出期限は、会社設立後3ヶ月を経過する日の前日、または最初の事業年度の末日の前日のうち、いずれか早い方です。
    参考:青色申告書の承認の申請(国税庁)
  • 給与支払事務所等の開設届出書
    開業時に従業員がいない場合は必要ありませんが、後日新たに従業員を雇うときに必要になります。提出期限は、従業員を雇用した日から 1ヶ月以内です。
    参考:給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(国税庁)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
    こちらの申告書を提出すれば、源泉徴収税の納付を年2回と回数を少なくすることができます。給与の支給人員が常時10人未満の事業者のみ提出が可能です。提出は任意ですが、納付に関する事務作業が減るため申請することをおすすめします。提出期限はなく、提出した翌月の給与から特例が適用されます。
    参考:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)
  • 申告期限延長の特例の申請書
    確定申告書の提出期限は、決算から2ヶ月以内が原則です。この申請をすることで、申告期限を1ヶ月延長し、決算から3ヶ月以内にできる特例を受けれらます。しかし、申請の有無に関わらず、期限の2ヶ月を超えて申告書を提出すると、延滞税がかかることがあるため注意が必要です。事前に申請することで延滞税を抑える効果があるため、専門家と相談して、申請するかどうか検討しましょう。
    参考:申告期限の延長の特例の申請(国税庁)

以上の税務署への設立届等については、会社設立ソフトを利用すると自動で作成されるものが多いため、会社設立をしようと思っている方はソフトを利用することをおすすめします。

4. 都道府県税事務所等に対する届出

法人設立届出書は、設立から2ヶ月以内に所轄の税務署または税務課に提出する必要があります。

申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書の提出も可能ですので、国税の方で延長を行っているのであれば、こちらも提出しないとマズイです。

都道府県税事務所等に対する届出も、税務署への設立届等同様、会社設立ソフトを利用すると自動で作成されるものも多いため、会社設立をしようと思っている方は利用することをおすすめします。

出典:法人設立届出書(国税庁)

5. 社会保険料の設立届

すべての法人は社会保険に加入することが義務付けられており、健康保険・厚生年金保険・新規適用届が必要です。設立登記完了後5日以内に提出しなければいけません。

こちらは以下のサイトをご参考ください。
参考:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき(日本年金機構)

6. 労働基準監督署への届出

従業員を雇う場合は、労働保険に加入しなければいけません。これに関する書類は、労働基準監督署へ届出が必要です。以下のサイトをご参考ください。
参考:労働保険の成立手続(厚生労働省)

7. 銀行口座の作成

法人口座は個人口座に比べて審査が厳しく、開設までに時間がかかるため、できるだけ早く開設を行いましょう。

ネットバンキング、都市銀行の2つの口座を作成することをおすすめします。

ネットバンキングは

  • いつでもどこでも利用可能
  • 手数料などのコストが削減できる
  • 手続きが容易

など、多くのメリットがあります。

都市銀行は、ネットバンキングでは不可能な社会保険料や税金等の口座振替が可能です。どこにするか迷った時は、webバンキング手数料がかからない都市銀行にすることをおすすめします。クラウド会計ソフトとの同期を行う前提にするため、webバンキングが使える都市銀行の口座であれば同期が簡単にできます。社会保険料の支払いは忘れやすいので、このタイミングで口座振替を設定しておくと便利です。

8. 法人クレカの作成

どこのカードでも問題ありませんが、クラウドサービスの利用等でかなり活用する機会が多いので、限度額が大きいところをおすすめします。

また、資本金の額が少ないとカードの審査が厳しいため、会社設立前に資本金の金額をいくらかにするかを検討する必要がある点にご留意ください。

9. 電話番号・ドメインの取得

事業開始後に電話番号やドメインを獲得すると、変更の手続きが大変なので、会社設立後直ちに取得しておくことをおすすめします。

ドメインや電話番号の取得のためには登記簿が必要であり、多めに取っておいた登記簿はここで役に立ちます。

10. オフィスの契約等

こちらは必ず契約しなければいけないものではないため、自宅を会社の住所にすることも可能です。

自宅が賃貸であったり、レンタルオフィスの場合は、賃貸借契約書で法人登記が禁止されているケースがあるため注意が必要です。住所のみを借りられるバーチャルオフィスは、コストがあまりかからないという利点がある一方で、銀行口座を開設するための審査に苦労する場合があります。また、手続きや届出をする際は、本店として登記した住所を管轄する税務署や役所に行かなければならないため、生活や事業の拠点から離れていると手間がかかります。

そして忘れてはいけないのが、インターネット回線の開通です。契約から開通まで1ヶ月程度かかる場合があるため、実際にオフィスを使い始める時期を考慮して、少なくとも早めに下見依頼をするなど検討しましょう。

レンタルオフィスを契約する場合、掃除は業者が行うのか、周囲の環境が適切かなども加えて検討しましょう。

もし会計ソフトの選び方などで迷ったら

以上、実際に会社設立をした経験から、会社設立後に行うべきことを解説しました。効率的に手続きを完了し、ベストな状態で事業をスタートさせられるお役に立てましたら幸いです。

しかし、日常の業務をこなしつつ、会計のことを考えるのは非常に大変ですよね、、当事務所では会計・税務処理だけに止まらず、ビジネス理解にも精通するような体制を整えております。

長期的に会社を存続させるには盤石な会計・ファイナンス体制は不可欠です。設立当初から予実管理・資金管理体制が強い会社を構築したいと願う会社様はぜひお問合せください。

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